六月十八日のこと
鬼束ちひろは、ちいさかった。
彼女の詩は、自分の肉を切って、そこから流れ落ちる血で書き殴ったような言葉ばかりで、いつもしんどい。
そのしんどさが、痛くて、いつも救われていた。
なので、神格化、というと少し大げさかもしれないけれど、自分より大きくて、高い位置に立っているようなイメージを握りしめていた。
でも、はじめて参加した彼女のライブでは、僕が2階席から彼女を見下ろしていて、その姿はとてもちいさかった。
ちいさい、と言うと、語弊があるかも知れない。
僕と同じ、生身を持ったひとりの人間だと気づかされた、という表現の方が正しそうだ。
だからこそ、彼女のあまりに力強い声が響いた時、「ああ、やっぱり鬼束ちひろは特別だ」と改めて思い知らされた。
強くて、脆くて、鬼気迫っていて、なのに実はチャーミング。
大好きだけど、「やっぱり、好きだなぁ」と全身で再認識する夜だった。
吐きたくなるほど辛くて、悲しくて、寂しくなった時は、耳にこだまする彼女の叫びを思い出して、きっともう少しだけ生きていくことを決めるんだと思う。