彼らにだって言い分がある-『ネコはどうしてわがままか』
ひょんなことから我が家にやってきた猫は、先月1歳を迎えた。
そろそろ一人前か、といった頃合いのはずだけど、やたらと甘えん坊のままだ。子猫のように人の指をなめ、毎朝家を出る時にはひたすら鳴き続け、夜にはごそごそと布団に潜り込んでくる。
もちろん「かわいいなぁ」という気持ちもあるのだけれど、もう少し適度な距離というか、お互いの時間を大切にする生活なんてものを想像していた。なんだか、同棲話みたいだけれど。
とはいえ、いつまでこれが続くかも分からない。そっけない、猫のあるべき姿(?)に切り替わるタイミングがあるのかも知れない。そうなったらそうなったで、きっとさびしい親心。
本書のタイトルにも表れているけれど、動物行動学者の日高敏隆は、生き物たちのふだんの振る舞い、時には奇妙に映る行動の理由を平易な言葉で伝えてくれる。
数ページに収まるコラムがまとまっているのだけれど、面白いのは動物たちに関する事実というより、その"研究"を紹介しているところ。
研究は、「こんな仮説を立てたけど、どうだろうか」の繰り返し。時にそれは否定され、次の学説にアップデートされていく。
ファーブルは蝉の横で大砲をぶっ放し、動じない彼らに「セミは音が聞こえないのだ」と結論付けたそうだけど、いやいや実はそんなことはなくて……と話は続いていく。
それが間違いであろうとなかろうと、科学者が何を疑問に、それにどう理屈をつけていくのかという観察や発想の営みは、とても興味深い。
「ただの甘えん坊」と見ていた我が家の猫の振る舞いにも、生き物としての強かな行動理由があるのだろう。
もうちっと丁寧に観察して、彼らの言い分を聞いてあげないと、ですね。