ナインブックス

本にまつわることを、よく書く(はず)。

22世紀にも短歌はありますか-『ドラえもん短歌』

 

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 「ドラえもんの道具で何がほしいか」と問われたら、なんて答えるだろう。

"ほんやくコンニャク"やら"ビッグライト"やらいろいろあるけれど、まぁやっぱり、「どこでもドア」なのかな。我ながら、つまらない答えだなぁ。

 

どこでもドアのいいところは、そのシンプルさ。ドアを開けるだけで、行きたいところに、どこへでも、すぐに行けてしまう。

"ころばし屋"とか"ムードもりあげ楽団"も面白いけれど、いまいちこう、使い所を悩んでしまう。

 

ドラえもんをテーマに様々な短歌が収録された『ドラえもん短歌』も、やっぱりどこでもドアを題材にしたものが多い。

 

「いつだって 「どこでもいい」と 言う君じゃ どこでもドアは 使えないよね」

「ぼんやりと いろんな桜を 見て歩き どこでもドアで 帰る休日」

 

アマチュアも含めた有志の歌人たちの作品で構成された本書は、同じ素材でもそれぞれの切り口に触れることができて、ページをめくるのが楽しくなる。

ひみつ道具だけでなく、慣れ親しんだ作中のキャラクターやおなじみのシーンなど、バラエティに富んだものが多いのも嬉しいところ。

 

「私にも 入浴シーン あるけれど 君は突然 入ってこない」

 

なんて一首は、独特の滑稽さがあって好きだなぁ。

 

思えば、細かい作品の説明を必要とせずとも「ああ、あの場面ね」と僕たちの頭の中にビジュアルを映し出す「ドラえもん」の浸透っぷりに、改めて驚かされる。

国民的作品としての懐の深さがあるからこそ、「ドラえもんをテーマに短歌をつくろう」なんて一見突飛なアイデアも、見事に成立してしまう。

 

ページをぱらりぱらりとめくっていくうちに、つい自分もひょいっと参加したくなってしまう。さて、何をテーマにつくろうか。

きっと、どんな一首であっても、ドラえもんは「ふむ、君にしてはわるくない」なんて言ってくれるんじゃないかな。

 

 

ドラえもん短歌 (小学館文庫)

ドラえもん短歌 (小学館文庫)