ナインブックス

本にまつわることを、よく書く(はず)。

これも一局-『碁娘伝』

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いち囲碁好きとして日々悩んでいるのは、「どうすればみんなに囲碁を面白がってもらえるんだろう」ということ。

格子状の木の板の上に、白と黒の石をパチリと置いていく。ルールを知らなければ、ナンノコッチャである。

なので、細かい遊び方はわきにうっちゃって、まずは囲碁の面白さ、エッセンスを味わって欲しい。

そんな方にはまずはこの1冊……と言えたらいいのだけれど、『碁娘伝』で果たして”囲碁らしさ”に触れられるのだろうか。きついかな。きついな、やっぱり。


作中では、玉英という名の女暗殺者が次々とターゲットを殺めていく。

彼女、碁の腕もさることながら、剣もめっぽう強い。盤上で相手を制し、バッサバッサと剣で斬り伏せ、時にはまぁ、碁石を飛ばして目潰しに、なんて離れ業も繰り出す。

玉英の独特の感性で、“シチョウ”や”アタリ”といった囲碁の手を模した技も披露してくれる。

とまぁ、かなり異色ではあるけれど、小難しい理屈は置いておいて、この活劇を正面から楽しむのが一番だ。

 

ちなみに、囲碁に興じていると、ついつい「死ぬ」だの「生きる」だのといった言葉が飛び交う。

「あそこ、殺せるかな」
「もう死んでる。捨てよう」

そんな物騒なワードをぶつぶつと呟きながら、盤をにらめつける。

 

もしかしたら、「囲碁ってのは、そんな生っちょろい遊びじゃないんだぜ!」というヒリヒリした感覚を体感するのに、この漫画は打ってつけなのかも知れない。

 

 

碁娘伝

碁娘伝