ナインブックス

本にまつわることを、よく書く(はず)。

僕たちのためのサッカー-『ザ・サッカー』

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 昨日紹介したのは、「果てしてこれが囲碁漫画と呼べるのだろうか」という一品だった。

そうなると、今度は「果てしてこれがサッカー漫画と呼べるのだろうか」という本作をズズズッとおすすめしたくなる。

 

僕の周りには、サッカー好きが多い。テレビ観戦はもちろん、週末はちょっとサッカーを、なんて人もちらほらいる。

かたや自分は、サッカー選手名が呪文にしか聞こえない。この前はハーフタイムのことを休憩と呼んで、怒られた。

 

「なんだよ、サッカーてそんなに偉いのかよ……」と嘆く同胞たちこそ、漫画『ザ・サッカー』を手に取るべきだ。

大丈夫、この本を読むのにサッカーの知識はいらない。そして、読了後もサッカーというスポーツへの思いも特に湧き上がってこないので、安心してほしい。

 

サッカーや各種スポーツを題材に、大橋裕之独特の世界が紡がれていく。ひとまずギャグ漫画、と括ってしまうのが安全なのだろうけれど、どうにもその一言で片付けたくない魅力が詰まっている。

笑えて、幸せな気持ちになれて、なんだか哀しい。

 

頑張ることが賞賛へと繋がるスポーツを、"頑張らないこと"を体現する体現する作者が好き勝手に調理した本作。

ちょっぴりいじわるな目線のはずなのに、斜に構えたいやらしさは全くない。

汗をかきながら全力でボールを追った時とはまた異なる、爽やかな風が紙面から吹いてきます。

 

 

ザ・サッカー

ザ・サッカー