ナインブックス

本にまつわることを、よく書く(はず)。

なんだか、久しぶりだね-『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』

f:id:kyurikko:20180524002425j:plain

 

 

 

以前、小説の面白さを知ったのは川上弘美だと書いた。

 

 

 

その川上弘美を知ったのは、高校生の時の国語の教科書だった。

授業中、教壇に立つ先生の言葉を聞き流しながら、退屈しのぎにめくっていた教科書。

そこに、川上弘美の短編『神様』が載っていた。

 

神様 (中公文庫)

神様 (中公文庫)

 

 

となりの部屋に越してきた、大きな熊。

彼に誘われて川原まで散歩する、というだけの短いお話なのだけれど、「小説はこんなに自由でいいんだ」と爽やかな衝撃を感じたのを覚えている。

 

他にも、いくつかの小説や詩が、何年経っても僕の頭にこびりついている。

 

ほんのりと男女の恋愛模様を思い起こさせる「ジーンズ」。

幼い頃の氷菓子の思い出と悲しい戦争が結びついた「アイスキャンデー売り」。

巻き戻ることのない時間の"絶対さ"を見せつけられた「小さな手袋」。

 

断片的に、ではあるけれど、いくつかのワンシーン、そこで自分が描いた光景を、今でもありありと思い出すことができる。

だから、実は、その話のタイトルや著者については、おぼろげな記憶だったりする。

白状すれば、上記にあげた作品の中にも、覚えている内容を検索窓に打ち込んで調べ出したものがある。

 

書名の通り、教科書で取り上げられていた名作をひとまとめにした『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』。

見覚えのないタイトルでも、読み進めていくうちに「ああ、これは!」と当時の感触を思い起こさせる作品がきっとあるだろう。

 

どれだけ時間が経っても、作品は変わらずにそこに在り続ける。

風化することのない言葉というものの耐久性は、なんだかとても、頼もしい。

 

もう一度読みたい 教科書の泣ける名作

もう一度読みたい 教科書の泣ける名作

 

 

もう一度読みたい 教科書の泣ける名作 再び

もう一度読みたい 教科書の泣ける名作 再び