ナインブックス

本にまつわることを、よく書く(はず)。

そば、そば、そば。-『そばと私』

f:id:kyurikko:20180528233306j:plain

 

 

長野県は、そばがうまい。

当たり前すぎて通説のように感じ取っていたけれど、実際に長野に来てそばを食べてみると、本当にうまいのだからしょうがない。

味はもちろん、そこかしこにそば屋があるものだから、自然とズルズル音を立ててそばをすするのが日常になった。

そうなると、そば自体への関心もじわじわと大きくなり、『そばと私』もふむふむと以前より愉しく読めるようになった。

 

1960年に創刊した、「季刊新そば」。

なんともマニアックな雑誌ではあるけれど、この歴史が日本人の持つそば愛を端的に表している。

この雑誌に寄せられた、そば好きたちのエッセイをまとめたのが本書だ。

 

由緒あるそば雑誌となると、書き手も豪華、かつバラエティに富んでいる。

赤塚不二夫、色川武大、養老孟司、米原万里……

そばの魅力にとらわれた総勢67人が、各界から馳せ参じているというわけだ。

 

個人的には、建築家・隈研吾の「線的なものと身体」が特におもしろかった。

「食べ物と建築とはパラレルだ」という意外な言葉から始まる本稿。

塊でも面でもなく、線の建築家である隈研吾とそばの間に、不思議な共通項が浮かび上がってくる。

なかなか侮れないぞ、そば。

 

どのエッセイも数ページ、そばのようにささっと飲み込めるのもまた乙ですな。

お好きな書き手から、どうぞズルズルっと一杯やってください。

 

 

そばと私 (文春文庫)

そばと私 (文春文庫)