15年を追い詰める、30分。-『生存』
14年前に失踪していた娘が、地中に埋められた遺体となって帰ってきた。
妻を亡くし、ガンに体を蝕まれながらも、父はほんのわずかな手がかりにすがりつきながら犯人に迫っていく。
ストーリーを福本伸行、作画をかわぐちかいじが手がける本作。
両者を知っている人であれば、その面白さを読む前から確信できるはずだ。
殺人の時効は、15年。
残った半年に全力をかけるが、なにぶん手がかりは皆無に等しい。
娘の友人に当時の話を聞いたところで、遠い過去の出来事。
ぼんやりとした情報を得られるだけだ。
現実であればすぐに打つ手なし、となるところだけど、そこは漫画。
ある種ご都合主義ではあるけれど、ギリギリのところで次のヒントを掴み取り、じわりじわりと真相に近づいていく。
福本伸行の漫画に出てくるキャラクターたちは、独自の理屈を積み重ね、相手を追い詰めていく。
客観的に見れば「そんなに都合よくいもんか」と言いたくなるけれど、独特のセリフ回しと希薄で、不思議な説得力を帯びてくる。
特に本作では、骨太なかわぐちかいじのタッチもあいまって、なかばこじつけとも言える主人公の想像に「ううむ、なるほど」と唸らされてしまう。
まぁ、しょうがない。この父親には、諦めるという選択肢がないのだから。
そして、やっぱり極め付けは特異な設定から生まれるゲームの妙だろう。
時効の日付に近づく時計の針を横目に見ながら、犯人と相対するラストの攻防は秀逸の一言。
「ここまできて、捕まるものか」という犯人と、「ここまで追い詰めて、逃すものか」という主人公の真正面からのぶつかり合いは、もう、すこぶる面白い。
2巻で完結、という尺の長さも実に気持ちがいい。
ザ・エンターテイメントを味わってみてください。